ややこしいGT7の「固有振動数」って結局なに?
車高。分かる。キャンバー。なんとなく分かる。トー角も、タイヤがどっちを向いているかの話だと分かればまだ何とかなる。
そこへ突然出てくるのが、「固有振動数 2.20 Hz」です。
なんでクルマの足まわりをHzで調整するんだ。音か。Wi-Fiか。GT7のセッティング画面で、最初に見た時の意味不明さではかなり上位だと思います。
「GT7の固有振動数はバネレートと何が違う?」「Hzから計算して換算できる?」という疑問も、ここで一緒に整理します。
でも、意味が分かると固有振動数は意外と便利です。 ざっくり言えば、「バネが支える重さも含めて見た、バネの硬さの物差し」。 この記事では、実車のサスペンション工学を全部勉強するのではなく、GT7で固有振動数を触る時に困らないところまで整理します。
そもそも固有振動数とは何か
「固有振動数」という名前がややこしいだけで、考え方はそこまで難しくありません。 バネの上に重りを載せて、グッと押して手を離すと上下に揺れます。 その揺れやすいテンポが固有振動数です。
単位はHz(ヘルツ)。1Hzなら1秒に1回、2Hzなら1秒に2回のテンポです。 実際のクルマにはダンパーがあるので、いつまでもポヨンポヨン揺れ続けるわけではありません。 あくまで「バネと、それが支えている重さの組み合わせが持っている基本のテンポ」と考えると分かりやすいです。
固有振動数が高い → バネは硬い方向。
固有振動数が低い → バネは柔らかい方向。
実車の単純なモデルでは、固有振動数はバネの硬さと支える質量の関係で決まります。 式で書くと f = 1 / (2π) × √(k / m) ですが、これは覚えなくて大丈夫です。
大事なのは、同じバネでも重いものを載せるとゆっくり揺れ、同じ重さなら硬いバネほど速く揺れるということ。 つまり固有振動数は、単なる「バネの硬さ」より一歩便利な数字です。
GT7の固有振動数とバネレートの関係|計算するとどうつながる?
GT7では、スプリングレートを「kg/mm」や「N/mm」で入力する代わりに、固有振動数をHzで指定します。 数値を上げれば硬い方向、下げれば柔らかい方向です。
実車の単純モデルをバネ剛性 k 側へ書き直すと、k = (2πf)² × m。 バネが支える有効質量 m が同じなら、固有振動数 f が高いほど必要なバネレート(ばね剛性)も大きくなります。
実車でバネレートへ換算するにも、バネが支える質量やサスペンションのレバー比などが関係します。GT7内部でHzと車両物理をどう結び付けているかは公開されていないため、ゲームの表示値だけから実車のバネレートを一意に逆算する説明は避けます。
ここで面白いのが、実車の単純モデルでは同じ2.00Hzでも、軽いクルマと重いクルマで必要な有効ばね剛性は同じではないことです。 重いものを同じテンポで動かすには、理屈の上ではより強いバネ側の力が必要になります。
だからGT7で固有振動数を見る時は、「2.00Hzだから柔らかい」「3.00Hzだから硬い」と絶対値だけで決めつけるより、 その車の設定可能範囲の中で、どのあたりに置いているかを見る方が実用的です。
※GT7内部で使われている詳細な物理計算式は公開されていません。ここでは実車の固有振動数の考え方と、GT7上での設定項目としての意味を分けて説明しています。
GT7で固有振動数を高くするとどうなる? 低くすると?
| 高め | 低め | |
|---|---|---|
| サスの方向 | 硬い | 柔らかい |
| 姿勢変化 | 抑えやすい | 大きく使いやすい |
| 反応 | シャキッとしやすい | 穏やかになりやすい |
| 凹凸・縁石 | 高すぎると跳ねやすい | 追従しやすいが、低すぎると動きすぎる |
ここでありがちな勘違いが、「硬い=レーシング=速い」です。 平らな路面で高グリップタイヤを履き、大きな荷重がかかるなら硬めの足が必要になる場面はあります。 でもニュル北みたいにうねりやギャップが多いところで硬くしすぎると、タイヤが路面を追いきれず、かえって怖くなることがあります。
逆に柔らかすぎると、ブレーキで大きくノーズダイブしたり、切り返しで車体が落ち着くまで待たされたり、底付きしやすくなったりします。
つまり狙うのは「一番硬いところ」ではなく、タイヤが路面を使えて、なおかつ車体が余計に動きすぎないところです。
0.1Hzって誤差みたいなもの?
セッティング画面で2.00Hzと2.10Hzを見ると、ほとんど同じ数字に見えます。 ところが、実車の単純モデルで同じ重さを支えると仮定すると、話は少し変わります。
固有振動数はバネ剛性の平方根に比例するので、2.00Hzから2.10Hzへ上げるには、 理屈上のバネ剛性は約10%上がります。
少なくとも実車の単純モデルでは、0.1Hzは見た目ほど小さな差ではありません。GT7での体感量は車種や他の設定によって変わります。
もちろんGT7の内部計算がこの式そのままだと言っているわけではありません。 ただ、「0.1くらいなら適当でいい」と雑に扱う数字でもない、くらいに覚えておくとちょうどいいです。
フロントとリアは同じ数値でいい?
これもGT7の固有振動数でよく迷うところです。 F 2.20 / R 2.20にすれば「前後同じ硬さでニュートラル」な気がしますが、そう単純ではありません。
前後では支えている重量も違えば、サスペンション形式も違います。 駆動方式やタイヤサイズ、ダウンフォースのかかり方も違う。 そもそもGT7では、フロントとリアで設定可能なHzのMIN/MAXが違う車もあります。
なので前後の数字は、「同じにするか」より前後のバランスをどうしたいかで考えます。
| 相対的な変更 | 出やすい方向 |
|---|---|
| フロントを硬くする | フロントのグリップを使いにくくなり、アンダー方向へ行くことがある |
| リアを硬くする | リアが動きやすくなり、旋回しやすい/オーバー方向へ行くことがある |
| 前後とも硬くする | 全体の姿勢変化は減るが、路面追従とのトレードオフ |
| 前後とも柔らかくする | 路面を拾いやすくなる一方、車体の動きは増えやすい |
あくまで「傾向」です。 LSD、ARB、トー、重量配分まで絡むので、固有振動数だけでアンダー/オーバーを決めるものではありません。
実車の世界には、リア側の固有振動数を少し高くして前後の上下動を収めやすくする「Flat Ride」という考え方もあります。 ただし、それを「GT7ではリアを必ず○%高く」と固定ルールにするのは乱暴です。 まずはその車の前後レンジと実際の症状を見る方が安全です。
タイヤ・ダウンフォース・コースとの関係
「レーシングタイヤなら固有振動数は何Hz?」も検索されやすい疑問ですが、ここに全車共通の数字はありません。
方向性としては、高グリップタイヤほど大きな荷重を受け止められるので、スポーツタイヤよりレーシングタイヤの方が高めの固有振動数を使える場面は増えます。 ダウンフォースが大きい車も、高速域で車体を支えるために硬めが必要になることがあります。
でも、コースが荒れていれば話は逆方向にも動きます。 縁石やうねりが多いコースでは、少し柔らかくしてタイヤを路面へ追従させた方が走りやすいことがあります。
タイヤ × 車重 × 前後重量配分 × DF × コースの凹凸。
GT7の固有振動数は、この組み合わせで考えると迷いにくくなります。
タイヤ別の考え方は、別記事の「タイヤ別セッティング思想」も合わせてどうぞ。
固有振動数とダンパー、ARBは何が違う?
サスペンション項目がややこしくなる最大の理由が、「どれも硬さっぽい」ことです。 役割をざっくり分けると、かなり見通しがよくなります。
| 項目 | ざっくり何を決める? |
|---|---|
| 固有振動数 | バネ側の硬さ。車体をどれくらい動かすかの土台。 |
| 減衰比(ダンパー) | 動いたサスをどう収めるか。縮む/戻るスピード感。 |
| ARB | 左右のロールをどれくらい抑えるか。前後のロール配分にも効く。 |
たとえば「縁石で一発ドンと跳ねる」なら、固有振動数だけでなく縮み側ダンパーを見るべきかもしれない。 「揺れたあといつまでも収まらない」なら伸び側。 「旋回中だけ外側へ大きく傾く」ならARBも候補です。
何でも固有振動数で直そうとしないことが大事です。 ダンパーは伸び側と縮み側、 ARBはスタビの基礎で分けて説明しています。
固有振動数を含めて各項目の役割を一度に見たい場合は、GT7 セッティング一覧・早見表から逆引きできます。
結局、GT7の固有振動数は何Hzがおすすめ?
ここまで読んで「で、俺の車は何Hzにすればいいんだ」と思ったなら正常です。
残念ながら、ロードカーは2.00Hz、レーシングカーは3.00Hzみたいな万能表は作れません。 車種によって設定可能範囲そのものが違いますし、同じタイヤでも車重やDF、コースで欲しい硬さが変わります。
ネットで見つけた「F 2.50 / R 2.70」を別の車へそのままコピーして微妙になるのは、珍しいことではありません。 その数字が悪いのではなく、その車にとって2.50Hzがレンジのどこなのかが違うからです。
まずタイヤと用途を決める → その車のF/R設定可能範囲を見る → 中でどの位置を使うか決める → 実走して前後バランスを詰める。
数字そのものを暗記するより、「この車では低めなのか、中間なのか、高めなのか」と見る方が他車種にも応用できます。
v0.4.1 Betaでは、固有振動数をどう扱っているか
このサイトの自動チューニングツールでも、固有振動数はずっと厄介な項目でした。 理由は簡単で、車によって設定可能なMIN/MAXが違うからです。
そこでv0.4系では、いきなり「2.34Hz」と決め打ちするのではなく、車両条件からまず狙う位置を作り、最後にその車の実レンジへ当てはめる考え方にしています。
v0.4.1 Betaでは、以前のようにF/RのMIN・MAXを4項目手入力しなくても、 「1.50–3.00 Hz」のような設定可能範囲を選ぶ方式に変更しました。 フロントとリアは別々に指定でき、一覧にない範囲だけ手入力できます。
GT7の画面を見ながら「この車、リアだけレンジ違うじゃん」と気づいた時にも、その場で合わせやすくしています。 固有振動数を完全自動で“正解”にするというより、ややこしい入口を少し短くするための機能です。
GT7の固有振動数でよくある疑問
固有振動数は高いほど速い?
いいえ。高くすると姿勢は抑えやすくなりますが、高すぎると凹凸への追従性を失いやすくなります。 路面が荒れたコースでは、少し柔らかい方が速いこともあります。
フロントとリアは同じ数値でいい?
同じでも走れますが、「同じHz=ニュートラル」とは限りません。 前後の重量、駆動、タイヤ、設定レンジを見ながら決めます。
レーシングタイヤなら何Hzがおすすめ?
全車共通の数字はありません。 スポーツタイヤより高め方向を試しやすくなりますが、車種の設定範囲とコースを基準にしてください。
固有振動数とダンパーはどっちを先に触る?
ベース作りなら固有振動数でバネ側の土台を決め、その後ダンパーで収まり方を整える方が整理しやすいです。 ただし症状が「跳ねる」「収まらない」と明確なら、ダンパー側が原因のこともあります。
固有振動数とバネレートは同じもの?
同じ数値ではありません。実車の単純モデルでは、固有振動数はバネレートと、そのバネが支える質量の組み合わせで決まります。 GT7ではバネレートそのものではなくHzを設定しますが、ゲーム内部の換算式は公開されていません。
車高を変えたら固有振動数も変えるべき?
車高を変えたから必ずHzも変更、ではありません。 ただ、車高を下げて底付きしやすくなった、姿勢変化が変わった、という場合は固有振動数を含めて見直す価値があります。
まとめ:Hzの数字より、「何を表しているか」が分かればいい
GT7の固有振動数は、名前ほど怖い項目ではありません。 高い=硬い方向、低い=柔らかい方向。 まずはこれで十分です。
そのうえで、絶対値だけを比べず、その車の設定可能範囲のどこにいるかを見る。 前後差は車の曲がり方を見ながら整える。 高グリップタイヤだからといって、何でも硬くすればいいわけではない。
ここまで分かると、GT7のセッティング画面で「2.20Hz」と出てきても、もう謎の電波には見えなくなるはずです。
参考:
グランツーリスモ7 オンラインマニュアル:サスペンション /
JEGT:固有振動数と減衰力の役割 /
GTPlanet:Suspension Tuning & Lever Ratio /
Fat Cat Motorsports:Ride Frequency / Flat Ride
※実車の単純化したサスペンションモデルを使って説明している箇所があります。GT7内部の詳細な物理計算式は公開されていません。